現役銀行員、1級ファイナンシャルプランニング技能士のなにワンです。
マンションを売却したとき、利益がでた場合は譲渡所得に対して納税をする必要があります。
わたくし、なにワンも昨年マンションを売却して利益がでたので確定申告にいってきました。
この記事では
・マンション売却などで売却益が出た場合の確定申告方法がわからない。
・減価償却の基本的な計算がわからない。
・具体的な申告の計算方法が知りたい。
など、初めて譲渡所得の確定申告をされる方に向けた記事となります。
※確定申告では1円単位で計算しますので、見づらいですがあえて1円単位で計算しています。
【確定申告の時期と整理券】
1月1日から12月31日の1年間の申告を翌年2月16日から3月15日までに申告する事になります。
税務署では申告期間中、多くの申告者が来署することから確定申告するための入場整理券が発行されます。
整理券は税務署に直接いって当日整理券を現地でもらう方法と、事前にLINEアプリで国税庁公式アカウントから予約するする方法の2とおり。
私の感想としては事前にLINE予約をされたほうが、順番待ちも当日整理券の方に比べたら早く申告会場に入れたのでお勧めです。
詳しくは国税庁ホームページをご確認ください。
LINE公式アカウントについて|国税庁 (nta.go.jp)
【確定申告に必要な書類】
取得費用(売却する物件を購入した当時の書類)
・購入時の売買契約書
・売買契約書印紙代(契約書に貼付している額面で確認)
・各種税金の明細(登録免許税、不動産取得税、印紙税)
・登記の司法書士報酬領収書
・仲介手数料領収書(中古購入の場合)
・購入時住宅ローンの事務手数料明細書
・購入時住宅ローンの保証料明細書、ローン返済明細書(借入日~使用開始時まで日割計算)
・住宅ローン契約書の印紙代(契約書貼付している額面で確認)
売却費用(売却時分)
・売却の売買契約書
・売買契約書印紙代(契約書に貼付している額面で確認)
・仲介手数料の領収書
ちなみに税務署にいって初めて知りましたが、売買契約書やその他購入経費の領収証などの
コピーは提出不要でした。
その場で税務署の職員の方と金額を確認しながら必要書類に記入していきます。
税務署での申告方法については税務署によっても対応が違うかもしれませんので、事前に税務署へ問い合わせいただくと間違いありません。
【譲渡所得税の計算】
ここからが本題です。
実際に私が確定申告した内容を公表します。
2021年3月にマンションを売却。
10年前に購入した時の金額は3,200万円、今回の売却金額は3,450万円
利益が250万円になります。
その250万円の利益から購入および売却した際の諸経費を引く事ができます。
諸経費を引いた利益に対して譲渡所得税がかかります。
それではもう少し具体的に見ていきます。
私が申告した実際の内容です。
マンションの当初購入代金:32,000,000円
マンションの売却金額:34,500,000円
マンション購入費の土地と建物の内訳
土地価格:11,630,000円
建物価格:19,400,000円
消費税:970,000円
こちらの金額は購入時の売買契約書に記載があります。
土地価格と建物価格の内訳がなければ消費税額から建物価格を算出する事も可能です。
購入諸経費:547,324円
(内訳)
登記費用:108,000円
購入売買契約印紙代:15,000円
ローン事務手数料:31,500円
ローン契約印紙代:20,200円
不動産取得税:359,400円
住宅ローン金利日割分:12,388円
住宅ローン保証料日割分:836円
売却諸経費:853,150円
(内訳)
仲介手数料:843,150円
売却契約書印紙代:10,000円
※住宅ローン金利日割分計算
借入日:平成22年3月29日
入居日:平成22年4月16日
住宅ローン返済明細書の返済額欄に初回33日間の利息21,517円と記載。
21,517円/33日=1日652円
19日×652円=12,388円
※住宅ローン保証料日割計算
保証料560,809円/12775日(35年間)=1日44円
19日×44円=836円
ここからが具体的な計算です。
まずは購入費から計算します。
購入諸経費の547,324円はマンション購入全体の諸経費なので、それを土地と建物の金額比で分けます。
土地=11,630,000円/32,000,000円=36%
建物=(19,400,000円+970,000円)/32,000,000円=64%
購入諸経費である547,324円を土地建物で分ける。
土地=547,324円×36%=197,037円
建物=547,324円×64%=359,287円
土地の取得費=11,630,000円+197,037円=11,827,037円
建物の所得費=(19,400,000円+970,000円)+359,287円=20,720,287円
【減価償却の計算】
建物価格は期間の経過で価値が減少していきます。
それを減価償却といいます。
建物の所得費である20,720,287円から減価償却費を引きます。
減価償却費の計算
減価償却費=取得金額×0.9×償却率×経過年数
※経過年数の1年未満の端数は6ヵ月以上は1年、6ヵ月未満は切り捨て。
(償却率)
参照:国税庁ホームページ
では計算式をあてはめていきます。
20,720,287円×0.9×0.015×10年=2,797,238円
ここで豆知識です。
経過年数は私は住民票を移した日と思っていたのですが、税務署職員の方によれば売却の売買契約日でも可能との事でした。
私の場合、マンション入居日が2010年4月16日で転居日が2021年3月25日、10年11か月入居した事になります。
経過年数の計算は1年未満の端数の6ヵ月以上は切り上げ1年というルールがあるので経過年数11年と思っていました。
しかし売買契約日が2020年9月だったので、経過年数10年となりました。
当然経過年数が短いほうが減価償却費が安くなるのでお得になる計算です。
建物取得費
20,720,287円(建物取得費)-2,797,238円(減価償却費)=17,923,049円
これに土地取得費である11,827,037円を足した297,500,876円がマンションの取得費。
売却金額は34,500,000円から売却諸経費853,150円を引いた33,646,850円が売却金額。
売却金額の33,646,850円からマンション取得費の297,500,876円を引いた3,896,764円が利益となり、この金額に税率をかけた金額を納税する事になります。
【税率について】
税率は、「長期譲渡所得」になるか「短期譲渡所得」になるかで下の表のように異なります。
土地や建物を売った年の1月1日現在で、その土地や建物の所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」に、5年以下の場合は「短期譲渡所得」になります。
あくまでも1月1日時点なので6月に売ろうが12月に売ろうがさかのぼって1月1日が基準日となります。
例えば、令和3年中に売った場合は、その土地や建物の取得が平成27年12月31日以前であれば「長期譲渡所得」に、平成28年1月1日以後であれば「短期譲渡所得」になります。
参照:国税庁ホームページ
【納税額の最終計算】
私の場合、長期譲渡所得になるので所得税の税率は15%となります。
利益が3,896,764円となりますが、100円未満は切り捨てルールがありますので、
実際は3,896,000円に税率をかける事になります。
所得税=3,896,000円×15%=584,400円
こちらの金額が譲渡所得の所得税納税額となります。
住民税は5%となりますので
住民税=3,896,000円×5%=194,800円
以上で納税金額の計算終了となります。
【譲渡所得の特別優遇制度】
マイホームを売却し利益が出た場合、以下3つの優遇制度があります。
参照:国税庁ホームページ
ここで注意点
こちらの優遇制度と住宅ローン控除は併用できません。
どちらかしか受けれません。
私の場合、住宅ローン控除のほうがお得だったので、3,000万円の特別控除と軽減税率の特例は使用しませんでした。
これはどちらがお得かは、次また持家で住宅ローンを組むのか、住宅ローンの金額などにより選択肢が変わりますのでよく、計算のうえ制度をご利用ください。
そもそも、次の居住が賃貸であれば3,000万円の特別控除と軽減税率の特例を使用するべきです。
【まとめ】
マイホームを売却して利益が出た場合は確定申告を行い、納税する必要があります。
補足として、もし確定申告をせずほったらかしにした場合は無申告加算税や延滞税を課されます。
今回、私が確定申告して感じた事は、何も知らないまま税務署に行くよりも、ある程度事前学習を行ったうえで申告会場に行ったほうが、間違いがなく場合によっては損する可能性もあります。
ちなみに、保証料と住宅ローン金利の日割金額を取得経費に算入する事を最初受付した税務職員のかたは知りませんでした。
こちらが指摘して、やっと算入できた経緯があります。
また、確定申告の時期が迫って急いで準備するのもお勧めしません。
ある程度余裕をもって準備、申告していただければと思います。